- ストロークスゲインドは「平均との差」でショットの質を評価する指標
- ロングゲーム(ティーショット+アプローチ)がスコア変動の約68%を占める
- 多くのアマチュアは「パットが苦手」と思い込んでいるが、実はアプローチが最大の課題であることが多い
- スコアデータさえあればアマチュアでもSG的な分析が可能
「パットが入らない」は本当か
スコアが伸びない原因を聞くと、多くのゴルファーが「パットが……」と答えます。ところが記録をカテゴリ別に分けて見ると、実はアプローチショットで一番打数を損していた、というケースが驚くほど多い。
この思い込みと実態のズレを数字で見えるようにするのが、ストロークスゲインド(SG)という指標です。
ストロークスゲインド(SG)とは
ストロークスゲインド(Strokes Gained)は、ゴルフのパフォーマンスを「平均との差」で評価する統計指標です。
コロンビア大学のマーク・ブロディ教授が開発し、PGAツアーで2011年から公式統計として採用されました(Mark Broadie, Interfaces, 2012)。フェアウェイキープ率やパーオン率では見えなかった強みと弱みを、打数という共通の単位で数値化できるのが特徴です。
従来の統計との違い
フェアウェイキープ率やパーオン率には、それぞれ見落としがあります。
| 指標 | 問題点 |
|---|---|
| フェアウェイキープ率 | 1ヤードでも外れたらミス扱い。距離感は無視 |
| パーオン率 | グリーンに「乗った」だけ。ピンとの距離は関係なし |
| 平均パット数 | パーオンしないとカウントされない場合がある |
具体例で理解する
残り150ヤードのショットで考えてみましょう。
- PGAツアー平均: ブロディの研究によると、150ヤードからホールアウトまで平均2.99打
- あなたのショット: グリーンに乗り、残り6m → ここからの平均は1.78打
- 使った打数: 1打
良いショットかどうかを、感覚ではなく打数の得失で言い切れるわけです。
SGの4つのカテゴリ
ストロークスゲインドは4つの領域に分けて分析します。
SG: Off the Tee(ティーショット)
ティーショットの質を評価します。飛距離だけでなく、方向性と結果的なポジションを含めた総合評価です。
SG: Approach(アプローチショット)
100ヤード以上のグリーンを狙うショットの質。ブロディの分析によると、ロングゲーム(ティーショット+アプローチ)がスコアの変動の約68%を占め、最も影響の大きいカテゴリです。一方、パッティングはスコア差の約15%にとどまります。
SG: Around the Green(グリーン周り)
グリーン周り30ヤード以内のショット。チップやピッチ、バンカーショットが対象です。
SG: Putting(パッティング)
グリーン上でのパッティングの質。距離別に詳細な分析が可能です。
「パットが苦手」という自己申告は、SGで検証すると外れていることが多い指標です。ブロディの研究でも、スコアを左右しているのはロングゲーム(変動の約68%)で、パッティングは約15%にとどまります(Every Shot Counts, 2014)。
アマチュアがSGを活用する方法
プロのようなShotLinkシステムがなくても、SG的な考え方は使えます。
ホール別のスコアを記録する
まずはラウンドごとのホール別スコアを正確に記録しましょう。パット数も分けて記録すると、分析の精度が上がります。
カテゴリ別に打数を分類する
ティーショット(1打目)、アプローチ(100y以上)、ショートゲーム(100y以内)、パッティング(グリーン上)の4カテゴリに分類します。
基準値と比較する
アマチュアの平均スコア別の基準値を使って比較します。
以下はShot ScopeやSwingUの大規模データに基づく、ハンディキャップ別の基準値です。
| カテゴリ | 90台(HC15) | 80台(HC10) | 70台(Scratch) |
|---|---|---|---|
| パット数/R | 36 | 33 | 31 |
| ペナルティ/R | 2.5打 | 1.0打 | 0.3打 |
| GIR(パーオン率) | 23%(4.1回/R) | 35%(6.3回/R) | 56%(10回/R) |
| スクランブリング | 25% | 32% | 50% |
SGで見える「練習すべきこと」
SGのいいところは、次にどこを練習すればいいかが自然に決まる点です。
よくあるパターン
数字が偏ったとき、その先の練習をどこに向けるか。典型的な対応を挙げておきます。
| SG結果 | 改善ポイント |
|---|---|
| SG: Putting が大きくマイナス | 距離感の練習を優先 |
| SG: Approach が最も低い | アイアンの方向性を改善 |
| SG: Off the Tee がマイナス | OBの回避戦略を見直す |
| SG: Around the Green が低い | 30-50yのアプローチ練習 |
SG分析を始めるために必要なデータ
最低限そろえたいのは次のデータです。
- ホール別のスコア
- ホール別のパット数
- (できれば)フェアウェイキープの有無
- (できれば)パーオンの有無
5ラウンド以上たまると、統計的に意味のある傾向が見えてきます。
まとめ
ストロークスゲインドの価値は、従来の統計では見えなかった弱点がはっきりすることにあります。4つのカテゴリのどこで打数を損しているかがわかれば、練習の優先順位に迷いません。「なんとなくパットが苦手」と感覚で決めつける代わりに、数字を根拠に練習を組み立てられます。
スコアデータさえあれば、アマチュアでも同じ考え方は使えます。まずは自分のラウンドを4カテゴリに分けて眺めるところから始めてみてください。
参考文献・データについて
本記事のSG理論はMark Broadie教授の研究に基づいています。基準値データはShot Scope・SwingUの公開統計を参照しています。
- Mark Broadie「Assessing Golfer Performance on the PGA TOUR」(MIT Sloan Sports Analytics Conference, 2011)
- Mark Broadie『Every Shot Counts』(2014, Avery)
- PGA Tour「公式統計」 pgatour.com
- GolfWRX「ストロークスゲインド解説」 golfwrx.com
- Shot Scope「GIRデータ」 shotscope.com
- SwingU「スクランブリング率」 swingu.com
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