- グリーン奥からの寄せは、受けグリーンの傾斜が全部下りに裏返る場所。ラフが絡んでスピンも効かない
- 最初に決めるのは着地点ではなく、カップをどこまで通り過ぎてよいかの範囲
- 基本は低く出して手前から転がす。上げて止めるロブは、転がすルートがないときの最終手段
- 狙いはピンではなく2パット圏内。奥からのボギーは成功と数える
奥に外してしまった後の話
砲台グリーンの攻め方で、受けグリーンの奥にだけは打つな、と書きました。番手選びで奥を避ける話はあちらの担当です。この記事はその続き。避けたつもりでも外れるときは外れるので、グリーン奥のラフに立ってしまってからの打ち方と考え方だけを扱います。
奥からの下りが難しい理由
日本のグリーンには、奥が高くて手前が低い受けグリーンが多いと言われます。手前から打つぶんには球を受け止めてくれるこの傾斜が、奥に回った瞬間、全部が下りに裏返ります。
落ちた球は下り面でバウンドが伸びて、そのあとも傾斜なりに加速します。平らな場所の感覚で打つと、体感で倍は転がる。
そしてグリーンの奥は、たいていラフです。花道は手前にしかありません。ラフからの球にはスピンがかからないので、傾斜で止まらない球を、スピンでも止められない。難しさの正体はこの掛け算です。
おまけに、下っているぶんピンは実際より近くに見えます。寄せたくなる絵が目の前にある。ここで欲を出すと何が起きるかは、後半の数え方の節で書きます。
最初に決めるのは通過してよい範囲
奥からの寄せで最初にやることは、落とし所探しではありません。カップをどこまで通り過ぎてよいか、先に線を引くことです。
カップの先2〜3歩までは合格、グリーンからこぼれなければ成功。そう決めてから逆算すると、落とし所は自然と手前のエッジ付近に決まります。逆にカップのそばで止める前提で組み立てると、落とし所はどんどんカップへ寄っていき、下りに落ちた球はそのまま反対側のカラーまで走ります。
通り過ぎることには、もうひとつ利点があります。カップを過ぎた球の次は、上りのパットです。手前で止めようと欲張ってショートすると、また下りが残る。下りの1mより上りの2mのほうがやさしいという話は、グリーンの読み方の基本に書いたとおりです。
打ち方は低い球から順に
選択肢を検討する順番は決まっています。低い球からです。
まず、パターかチップで低く出して、エッジの手前から転がす。ボールとグリーン面の間が短い芝でつながっているなら、これが第一候補です。転がしのミスは距離が合わないだけで、球はグリーンのどこかに残ります。
ラフを越えないと届かないなら、少しだけ上げて、それでも落とし所はできるだけ手前。キャリーはラフを越える最小限にして、あとは転がりに任せます。
上げてスピンで止めるロブは最終手段です。下りが速くて転がすルートが本当にない場面は、確かにあります。ただ、ラフから打つロブはダフリとトップの振れ幅がいちばん大きい球で、ミスすれば同じ場所からもう1回か、グリーンの反対側です。使っていい条件はロブショットを使うべき場面と使うべきでない場面に譲りますが、順番だけは言い切っておきます。ロブが最初に浮かんだら、先に転がすルートを2本探してからにしてください。
ライの浮き沈みで変える計算
同じ奥のラフでも、ボールの浮き沈みで打てる球が変わります。ここを見ないままクラブを抜くのは順番が逆です。
浮いているかどうかは、横から見てボールの赤道が見えるかで判断できます。沈んでいたら、スピンの計算は最初から捨ててください。飛び出した球は止まらない前提で、落とし所を1段手前へ送ります。
受けグリーンや砲台の奥は、グリーンから遠ざかる方向へ下る斜面になっていることが多く、構えると左足下がりが重なりがちです。この傾斜はただでさえ球が上がりにくいので、上げる選択肢はさらに狭くなります。
左足下がりで構えるときの基本は傾斜地からのショットにまとめました。要点だけ言えば、傾斜に沿って立って、低く出ることを受け入れる。ここでも答えは転がしに戻ってきます。
打つ前の手順
ライを確かめる
クラブを選ぶ前に、浮き沈みと足元の傾斜を見ます。浮いていれば選択肢は全部残り、半分沈んでいれば転がし前提、すっぽりなら脱出だけ。ここで打てる球の上限が決まるので、ピンの位置から考え始めないことです。
落とし所を1点に決める
通過してよい範囲から逆算して、落とし所をエッジ付近の1点に決めます。芝の色が変わる境目など、目印があると絞りやすい。打つ直前に最後に見るのはカップではなく、この点です。
素振りで芝の抵抗を確かめる
ボールの真横ではなく、少し離れた同じ深さのラフで2〜3回。ヘッドがどれだけ芝に取られるかは、見た目より素振りの手応えのほうが正直です。抵抗が強ければ、振り幅を足すのではなく、落とし所をもう1段手前に変えるほうへ倒します。
ダボにしないための数え方
奥からの寄せで守るのは、パーではなくボギーです。
数えれば分かります。寄せに失敗して反対側へこぼすと、寄せ2回に2パットでダブルボギーが確定線。1回でグリーンに乗せて2パットなら、ボギーで止まります。パーを拾えるのは寄せが2パット圏内、だいたい3歩以内に付いたときだけ。ピンに寄せる欲は、この計算の中では割に合いません。
私はこの欲で、同じグリーンを往復したことがあります。パー4の3打目、奥のラフからSWで上げにいってザックリ、次は勢い余って反対側のカラーまで。5オン2パットの7でした。ライは悪くなかったんです。パターで出せるところをSWで上げにいった、選択だけの失敗でした。
奥に外した時点で、パーの権利は半分手放しています。残り半分を追いかけてダボを呼ぶより、ボギーを確定させるほうが、1ラウンド通せば安くつきます。乗れば合格、2パット圏内なら上出来。この基準で打つほうが、結果としてピンに絡む球も増えるから不思議です。
まとめ
奥からの下りは、着地点ではなく通過してよい範囲から決める。打ち方は低い球から順に検討して、ロブは転がすルートがないときだけ。ライが沈んでいたらスピンは捨てて、落とし所を1段手前へ。狙いはピンではなく2パット圏内で、ボギーで上がれれば成功です。
そもそも奥に立つ回数を減らすのは、砲台グリーンの記事に書いたセンター基準の番手選びの仕事です。寄せの結果を記録しておくと、奥に外したホールで実際に何打かかっているかを後から数えられます。
よくある質問
下りの寄せはパターで打ってもいいですか?
エッジまでの芝が短くて、ボールが浮いているなら、パターが第一候補です。下りなら勢いは足りるので、多少芝が絡んでも届きます。沈んだラフからは芝に負けて距離が読めなくなるので、そこが切り替えの線です。迷ったら、失敗の幅がいちばん小さい道具を選んでください。
スピンで止める練習をすれば、奥からでもピンを狙えるようになりますか?
プロの試合で見るあの止まり方は、きれいなライと道具と練習量が揃った上の技術だと言われます。そもそもラフに沈んだ球にスピンをかける手段は、プロにもほぼありません。練習時間を割くなら低い転がしの距離感に使うほうが、奥からの平均打数は先に下がります。
参考文献・データについて
本記事の打ち方と数字は、コーチングの現場で使われる一般的な目安で、特定の調査データを参照したものではありません。転がる距離はグリーンの速さ、芝の種類、その日の刈り高で大きく変わります。受けグリーンが多いという傾向も、コース設計の一般論として書いています。
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