- 球の出だし方向はフェースの向きでほぼ決まる。曲がり幅はフェースと軌道のズレで決まる
- 左に出て右へ曲がるのか、右に出てさらに右へ曲がるのかで、手をつける場所が変わる
- 直す順番はグリップ、アドレス、軌道。逆から始めると迷子になる
- ラウンド中は直さない。狙いを左にずらして、その日のスライスと付き合う
右に消えていく球
ドライバーを振り抜いた瞬間、球が右へ切れていって林の中に消える。同伴者が黙る、あの数秒間。
私も長いことこれをやっていました。厄介だったのは、練習場で「今日は直った」と思って帰った翌週のラウンドで、また同じところへ飛んでいくことです。原因を勝手に1つに決めつけて、そこばかり触っていたからでした。
スライスは1種類ではありません。右へ曲がるという結果が同じでも、途中で起きていることが違えば、直す場所も変わります。
フェースの向きと軌道のズレ
球の曲がり方を決めているのは2つだけです。
ひとつはフェースの向き。インパクトの瞬間に、クラブの打面がどちらを向いていたかということです。もうひとつが軌道で、こちらはヘッドがどの方向へ動きながら球に当たったかを指します。目標線に対してヘッドが外から内へ横切っていく動きが、いわゆるアウトサイドイン。カット軌道とも呼ばれます。
弾道計測器が普及して分かったのは、球が飛び出す方向はほぼフェースの向きで決まる、ということでした。ドライバーだと打ち出し方向の8割強がフェースの向きの影響で、残りが軌道だそうです。昔のレッスンでは軌道の方向に飛び出してフェースで曲がると教えていましたが、実際は逆でした。
そして曲がり幅を作るのが、フェースの向きと軌道の差です。軌道に対してフェースが右を向いていれば、球は右へ曲がります。この差は1度で10ヤード前後、5度あれば40ヤードを超えるという計測データがあります。数度のズレで、球は林の中まで届く計算です。スライスに悩んでいる人を実際に測ると、4度から7度あたりに収まることが多いようです。フェースが開くというのは、目標に対してではなく軌道に対して右を向いた状態のことを言います。ここを取り違えたまま練習すると、直したつもりのものが直りません。
意図して小さく右へ曲げるのがフェード、意図せず大きく曲がるのがスライス。原理は同じものです。狙って曲げる方法はフェードとドローの基本にまとめてあるので、ここでは曲げたくないのに曲がるほうだけを扱います。
自分のスライスのタイプ
出だしの方向と、その後の曲がり方の組み合わせで3つに分かれます。
いちばん多いのが1行目です。左へ打ち出して右へ戻ってくるので、本人の感覚では左にも右にも行くことになり、狙いどころが決まらなくなります。バナナのような弧を描くやつですね。
3行目は数が少ないぶん、原因がはっきりしています。フェースが開いたまま当たっているので、グリップを直しただけで一日で変わることもあります。
問題は、自分の球の出だしが自分では見えないこと。振り抜いた直後に顔が上がるので、記憶に残るのは曲がりきった後の位置だけです。同伴者に「どっちに出た?」と聞くか、練習場でスマホを後方に置いて撮るのが確実です。私は撮るまで、自分の球が左に出ていることに気づいていませんでした。まっすぐ出て右に曲がっていると思い込んでいたので、直す場所をずっと間違えていたわけです。
練習場なら、正面のネットの支柱やヤード表示の看板を打ち出し方向の基準にできます。「3本目の柱の左に出た」と言えるだけで、自分のタイプはかなり絞れます。
グリップ、アドレス、軌道の順で確認する
順番は動かさないでください。グリップとアドレスを放置したまま軌道だけいじると、体はズレた構えを補正しようと勝手に動くので、余計にややこしくなります。私はここを飛ばして先に軌道の練習から入り、2ヶ月ぶんの球代を無駄にしました。
グリップ:左手のこぶしが2〜3個見えるか
アドレスで手元を見下ろしたとき、左手の甲のこぶしが2〜3個見えるのが目安です(右打ちの場合)。1個以下しか見えないなら、フェースが開いたままインパクトを迎えやすい握りになっています。左手を少し右に回して、こぶしが2個見える位置に置き直してみてください。握る強さは10段階の3〜4程度。強く握るほど手首が固まって、フェースが返らなくなります。
アドレス:肩のラインが左を向いていないか
足のラインは合っているのに、肩だけが目標より左を向いている人が多いです。この状態なら、体なりに素直に振るだけで軌道は外から入ります。地面にクラブを2本置いて、足のラインと肩のラインが目標線と平行になっているか確認します。ボールを左足寄りに置きすぎるのも同じ結果を招きます。ヘッドが最下点を過ぎて左へ抜けていく途中で当たるからです。
軌道:外から入ってくるのを止める
ボールの少し手前、飛球線の外側にヘッドカバーを置いて、当てずに打ちます。外から入るとカバーに当たるので、ごまかしが利きません。もうひとつ、両足を揃えたままハーフスイングで10球。バランスの悪い振り方をすると立っていられなくなるので、上半身から突っ込むクセが自然に減ります。
グリップとアドレスと軌道を同じ日にまとめて変えると、何が効いたのか分からなくなります。1ヶ所につき最低20球、できれば1週間。地味なやり方ですが、結局これがいちばん早いです。
ラウンド中の応急処置
ここまで書いておいてなんですが、コースでスライスを直そうとするのはやめてください。18ホールの間にスイングは変わりません。変わるのは、直そうとして生まれた新しいミスの種類だけです。後半になってフックとスライスが交互に出るようになり、そのまま崩れる。よくある落ち方です。
その日のスライスは、その日の持ち球として受け入れます。やることは狙いをずらすことだけ。
- 狙いをフェアウェイの左端に置く。曲がり幅が大きい日は左のラフの入り口まで
- 右がOBのホールはドライバーを置く。3番ウッドやユーティリティはロフトがあるぶん横回転が減り、曲がり幅も小さくなる
- 振る強さを8割に落とす。ヘッドスピードが上がるほど曲がり幅も大きくなる
ただし、これは練習場でやってはいけないことでもあります。左を向いて構えれば軌道はさらに外から入るので、スライスの原因そのものは強くなる。応急処置と練習を混ぜないでください。左を向いていいのはコースの上だけです。
スライスがスコアに乗る場所
スライスを直したい理由をフェアウェイキープ率だと思っている人が多いのですが、数字を見るとそこではありません。
Shot Scopeの統計では、パー4のティーショットがフェアウェイに残ったときの平均スコアは4.6打、ラフなら5.0打。差は0.4打しかありません。ラフからでも、そこそこ打てているということですね。
スライスがスコアを削っているのは、右のOBの一点です。OB1回の実質コストはおよそ2.2打。ペナルティの1打に、打ち直しで失う距離のぶんが乗るからです。ラウンドで2回出れば4打強。私が90を切れずにいた頃、落としていた打数のいちばん大きな塊がここでした。
なので、目標は曲がり幅をゼロにすることではありません。右のOBに届かないところまで抑えられれば十分です。20ヤード曲がる球でも、右が広いホールなら何の問題もない。厄介なのは、その20ヤードの先にOB杭が立っているホールのほうです。
自分がどちらなのかは記録で判断できます。ペナルティが出たホールと、そこで使ったクラブを毎回残しておけば、スライスが実際にスコアを削っているホールを後から特定できます。OBを減らす手順そのものはOB率を半分にするデータ分析に、ティーショット全体の組み立て方は90切りのドライバー戦略にまとめてあります。
まとめ
スライスの直し方を一言でまとめると、フェースと軌道のズレを小さくすること。ズレを作っている原因は人によって違うので、まず球の出だし方向で自分のタイプを確かめます。左に出て右へ曲がるならアドレスと軌道、右に出て右へ曲がるならグリップ。手をつける順番はグリップ、アドレス、軌道です。
そしてコースの上では直さない。左を狙って回り切る。曲がり幅は練習場で少しずつ小さくしていけば、そのうち右のOBが視界から消えます。
参考文献・データについて
打ち出し方向とフェースの向きの関係は、弾道計測器による計測をもとにした一般的な説明です。フェースと軌道の差に対する曲がり幅はトラックマンが公開しているツアー選手の計測値(キャリー275ヤード基準)で、飛距離、ヘッドスピード、クラブ、ボールによって変わります。スライサーの実測値はGOLFTECの計測データによる目安です。ティーショットの結果別のパー4平均スコアはShot Scopeの公開統計を参照しています。
- Shot Scope「ドライビング精度」 shotscope.com
- GolfWRX「Use the new ball flight laws to understand your tendencies」 golfwrx.com
- TrackMan「What is Face-to-Path?」 trackman.com
- GOLFTEC「How to Stop Slicing Your Driver」 golftec.com
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