- プッシュアウトは右にまっすぐ出て、曲がらずにそのまま右へ飛ぶ球。フェースと軌道が同じ右を向いて揃っている
- ズレて曲がるスライスとは仕組みが別。直すのはグリップではなく、ボール位置と体の回転
- インサイド軌道はフックと共通の土台。フェースの返りが軌道に揃えばプッシュ、返りすぎればフック
- ラウンド中に狙いを左へずらさない。返りが間に合った1球が引っ掛けになる。番手を下げて振り切る
曲がらないのに右へ消える球
ドライバーのミスの話は、スライス、フックと引っ掛け、テンプラとチョロに続いて4本目です。今回は、右にまっすぐ飛び出して、曲がらないままフェアウェイの右へ消えていくプッシュアウト。
このミス、当たりの手応えは悪くないことが多いんです。芯に近い音がして、飛距離も出ている。なのに球は最初から最後まで目標の右。曲がっていないだけに、何が悪いのか本人には見当がつきません。
フックの記事では、プッシュ単体なら右へまっすぐ飛ぶだけで済む、と書きました。あれは左のOBと比べての話です。右サイドにOB杭が並ぶホールなら、まっすぐ右へ行く球はスライスと同じだけスコアを削ります。しかも当たりが良いぶん、スライスより自覚が遅れる。私はこの球を調子が上がってきた証拠だと思い込んで、1ヶ月放置したことがあります。右ラフからの2打目ばかり上手くなりました。
スライスとの仕組みの違い
球の飛び出す方向はほぼフェースの向きで決まり、曲がり幅はフェースと軌道のズレで決まる。弾道計測器の普及以降、そう言われるようになりました。ここまではスライスの記事と同じ前提です。
プッシュアウトが曲がらないのは、そのズレがないからです。フェースも軌道も、同じだけ右を向いて揃っている。たとえるなら、目標の右を向いて立った人が、そのまま良いスイングをした状態です。スイング自体は素直で、向きだけが右。
だから、直す中身もスライスとは別物になります。スライスはフェースと軌道のズレを縮める話でした。プッシュは、揃っている2つをまとめて目標へ向け直す話です。ここでグリップをいじるのはやめてください。ズレていないものをわざわざズラすことになって、出てくるのはプッシュスライスか引っ掛けです。
右で揃う原因の切り分け
フェースと軌道が右で足並みを揃える経路は、大きく4つあります。
いちばん多いのは、体の回転が止まって腕が遅れるパターンです。ダウンスイングで体が先に開いていかないと、クラブは体の後ろに取り残されます。腕が遅れたまま当たれば、フェースが目標へ戻る時間がない。フックの記事に書いた、体が止まって腕だけ走る動きと同じ場所から出ています。腕が走って返ればフック、返り切らなければプッシュ。出口が違うだけです。
2つ目は右足に体重が残ること。右足の上で振り切ると軸が右に傾いて、ヘッドは内側から上向きに入ります。軌道が右を向き、フェースもそれに付き合う。フィニッシュで右足のかかとが地面に付いたままの人は、まずここからです。
3つ目はボール位置が右すぎること。フェースはインパクトへ向かって閉じながら戻ってきます。ボールが右にあるほど、閉じ切る前の、まだ右を向いている瞬間に当たる。構えの問題なので、スイングをいくら直しても消えません。
4つ目が、インから下ろしすぎ。スライス矯正やドロー練習の途中でよく出ます。イン軌道は身についたのに、フェースを戻す動きが追いついていない状態です。
フックと隣り合わせになる理由
プッシュとフックは、インサイドから入る軌道という同じ土台の上に乗っています。違いはフェースの返りだけ。返りが軌道に揃って当たればプッシュ、返りすぎればフックです。だから同じ日に、右へまっすぐの球と左へ巻く球が交互に出ます。
両方出ている日にフェースの側を手先でいじると、振り子が大きくなるだけです。先に触るのは土台のほう、つまりボール位置と体の回転。左へ巻き始めたときの対処はフックの記事に書いたので、ここでは繰り返しません。
直す手順
順番はボール位置、体の回転、フィニッシュです。構えで直るものを最初に片づけて、動きの修正は後に回します。
ボール位置を正面から撮って確かめる
自分の感覚は当てにしないでください。正面からスマホで1枚撮ります。ドライバーは左かかとの延長線上、7番アイアンなら真ん中より少し左が一般的な目安です。真ん中より右に写っていたら、左へ戻します。私のボールは知らないうちに半個ずつ右へ動いていて、写真を見るまで信じませんでした。
胸を目標へ向け切る素振りをする
ボールを打たずに、フィニッシュで胸とベルトのバックルが目標を向くまで回り切る素振りを10回。体が最後まで開けば、腕は置き去りになりません。その感覚のまま打って、出球が右から戻るかを確かめます。ボールを前にすると途端に体が止まる人は、振り幅を腰から腰まで落として同じことを。
フィニッシュで左足一本で立つ
打ち終わったあと、左足に全体重を乗せて3秒立てるかどうか。立てないなら右足に体重が残っています。右足はつま先立ちになって、靴の裏が後ろから見える。この形で終われれば、軸の右傾きはほぼ消えます。球の行方を追わずにフィニッシュだけ確かめる10球を、練習の最初に置くと効きます。
プッシュアウトでグリップを直すのは、ズレていないものをズラす作業です。かぶせれば引っ掛け、開けばプッシュスライスが新しく手に入るだけ。グリップは、ボール位置と体を直しても残ったときの最後の選択肢にしてください。
ラウンド中の応急処置
この連載で4本続けて同じことを書きますが、コースでは直さない。そのうえで、プッシュには他のミスと違う注意がひとつあります。狙いを左にずらさないことです。
スライスの日は左を向いてしのげました。曲がって戻ってくるからです。プッシュは曲がりません。左を向いた構えで、フェースの返りがたまたま間に合った1球は、そのまま左へまっすぐ飛びます。引っ掛けです。右を恐れて左のミスを1つ増やすだけで、ずらした意味がなくなります。
やることは番手を下げて、最後まで振り切ること。3番ウッドやユーティリティは短いぶん体の正面で捉えやすく、体が回り切る余裕も生まれます。左を警戒して途中で緩めるのがいちばんまずいのは、フックのときと同じです。
まとめ
プッシュアウトは、フェースと軌道が右で揃ったミスです。スライスのようなズレはないので、直すのはズレではなく向き。ボール位置を左へ戻し、胸を目標へ向け切り、左足の上でフィニッシュする。この順番でやれば、グリップに触る必要はたぶん最後まで出てきません。
コースの上では狙いを左に置かず、番手を下げて振り切る。曲がらないミスは、曲がるミスより行き先が読めます。直りも早いほうなので、右ラフ通いで済んでいるうちが直しどきです。
よくある質問
プッシュアウトとスライスの両方が出ます。どちらから直すべきですか?
出球のあとの曲がりで切り分けます。右に出てまっすぐならプッシュで、この記事の手順。右に出てさらに右へ曲がるならスライスで、直すのはフェースと軌道のズレのほうです。両方出る日は、どちらにも共通の入り口であるボール位置の確認からです。1日に2ヶ所を同時に触らないのは、この連載で毎回書いているとおりです。
ドロー練習を始めてからプッシュが増えました。練習をやめるべきですか?
やめなくていいです。イン軌道が先に身について、フェースを戻す動きが追いついていない途中経過であることが多いようです。ただし返りを手先で足すのはやめたほうがいい。返りすぎた球は左へ巻きます。体の回転とフィニッシュで返る時間を作るのが先で、そこから持ち球に仕上げていく話は80切りのドライバーが参考になります。
参考文献・データについて
本記事の内容はコーチングの現場で使われる一般的な目安をもとにしたもので、特定の調査データを参照したものではありません。出球の方向がフェースの向きに大きく左右されるという説明は、弾道計測器の普及以降に広く言われるようになった整理です。ボール位置の基準はクラブや体格で変わります。
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