- 寄せワンはグリーンを外した地点から2打で上がること。スクランブリング率とは数える単位も母数も違う
- 90台で約25%、80台でも約32%。10回外して7回はボギー以上になるのが普通
- 寄せワン率は2メートル圏内に止まった割合と、その距離の1パット率の掛け算
- 先に動かすべきは寄せ側。ピンに寄せる技術より、乗せる確率と距離感が効く
3メートルに寄って、外して、ボギー
グリーン左のラフから、PWで転がして3メートル。悪くない寄せです。同伴者も「ナイスアプローチ」と言ってくれる。そのあとパットが右に外れてボギー。
このパターン、1ラウンドに何回あるでしょうか。記録を付けていなかったころ、私は自分の寄せをまあまあ上手いほうだと思っていました。数え始めて分かったのは、寄せワンが決まるのは10回グリーンを外して2回か3回だということ。残りの7回はボギー以上でした。印象と実際で、倍くらいズレていたわけです。
寄せワンとスクランブリングの線引き
寄せワン(アップ&ダウン)は、グリーンを外した地点から2打でホールアウトすること。アップがグリーンに乗せる寄せ、ダウンがカップに沈めるパットです。
似た指標にスクランブリング率があります。こちらはパーオンを逃したホールで、最終スコアがパー以下だった割合。日常会話ではほぼ同じ意味で使われますが、数え方は別物です。
食い違うのは、途中で打数を失っているときです。ティーショットをOBにして、打ち直して、4打目をグリーン脇から寄せて1パット。寄せワンは成功、スコアはダブルボギーなのでスクランブリングは失敗になります。母数もズレます。1ホールで2回グリーンを外せば寄せワンの分母は2つ増えますが、スクランブリングの分母は1ホールぶんだけ。
とはいえ、どちらもグリーンを外したあとの後始末を測っている点は同じです。統計サービスの多くはスクランブリング率として公表しているので、目安の数字もそちらを流用して構いません。指標そのものの成り立ちとレベル別の見方はスクランブリング率とはにまとめています。
スコア帯別の目安
ハンディキャップでいうと、90台はHC15(平均スコア90前後)あたりの帯です。右端の回数に注目すると、90台と80台で成功数が1回しか違いません。80台の人もグリーンは12回前後外しているので、率が上がっても回数はさほど伸びない。差がはっきり開くのは、パーオン率が上がってグリーンを外す回数そのものが減ってからです。
低いと感じたなら、その感覚は正しいです。プロでも4割は決まりません。寄せワンは決まったときだけ記憶に残るので、体感値はいつも実際より高く出ます。ラウンド中に「今日は寄ってない」と思う日があるとしたら、それはたぶん平常運転です。
寄せワン率の分解
寄せワン率は、2つの数字の掛け算で決まります。2メートル圏内に止まった割合と、その距離の1パット率です。
なぜ2メートルかというと、そこから外はもう分の悪い賭けだからです。PGAツアーの距離別データでも、1.5メートル(5フィート)の1パット率が77%、3メートル(10フィート)で40%。アマチュアはこれより下です。3メートルに寄せた時点で、半分以上は入らない前提になります。
90台の寄せワン率25%を逆算してみます。2メートルのパットが6割入るとすると、2メートル圏内に止められているのは10回中4回。残りの6回は、パットを打つ前に勝負がついている計算です。
ここからどちらを動かすか。
- パット側を6割から7割にすると、0.4 × 0.7 で28%
- 寄せ側を4回から5回にすると、0.5 × 0.6 で30%
- 両方そろえば35%
パット側の1割は、2メートルを10本打って1本多く入れるということ。練習グリーンで積める種類の改善です。寄せ側の1回は、10回のうち1回多く2メートル圏内に止めるということ。数字の伸びはこちらのほうが大きく、しかも90台の人ほど余地が残っています。
グリーンに乗らない寄せ
その掛け算より前で、勝負がついている回があります。1打目でグリーンに乗らなければ、2メートル圏内も1パット率も関係なくゼロです。
ダフってエッジの手前で止まる。トップして反対側のカラーまで抜ける。10回のうち2回これが起きると、寄せワンの分子から2回消えるだけでは済みません。そのホールがボギーからダボに変わり、スコアカードの合計まで動きます。
だから、ピンに1メートルで付ける技術より先にやることがあります。乗る確率を上げることです。ロブショットの練習は楽しいですし、決まったときの気分もいい。ただ、乗る確率を下げてまで選ぶ球ではありません。
上げるか転がすかの判断基準はチップショットの基本に書きました。ざっくり言えば、転がして通れる道があるなら転がす。それだけで乗る確率はだいぶ変わります。
練習の順番
練習する順番は、掛け算の並びと同じでいいはずです。後ろから手を付けても、数字はあまり動きません。
乗らない寄せを減らす
まず1球で乗せる。ここが埋まらないうちに寄せの精度を上げても、数字は動きません。上げる球を減らすだけで済むことが多いです。
10メートル前後の距離感に時間を使う
グリーンを外したときにいちばん多く出てくる距離帯です。ここで5メートル残すか2メートルに止めるかが、寄せワン率をまるごと決めます。振り幅を3段階に固定して、同じ振りで打った球がどこまで転がるかを体に入れる。止まる場所を先に知っておく練習です。
1.5〜2メートルのパットを反復する
掛け算の後ろ側。この長さだけを繰り返します。5メートルや10メートルの練習は気持ちいいですが、寄せワンの成否に直結するのはこの距離です。
バンカーは別枠で確保する
出番は少ないのに、失敗すると一気に2打3打を失う場所です。週末ゴルファーのサンドセーブ率は約9%と言われていて、まずは1回で出すところから。詳しくはサンドセーブ率とはにまとめました。
順番を飛ばすと、たいてい無駄になります。乗る確率が7割のままで2メートルのパットだけ磨いても、そのパットを打つ機会自体が増えないからです。
まとめ
寄せワン率は、2メートル圏内に止まった割合とその距離の1パット率の掛け算です。90台なら約25%、つまり4回に1回。この数字を上げたいなら、先に触るのは寄せ側。乗る確率を上げて、10メートル前後の距離感を安定させる。ピンに絡める技術は、そのあとで足せばいい部分です。
まずは自分の寄せワン率を数えてみてください。3ラウンドぶんも記録すれば、だいたいの位置は見えます。表の目安と見比べて、寄せ側とパット側のどちらが遅れているかを決めてから練習を組むほうが、たぶん近道です。
参考文献・データについて
スコア帯別の目安は、Shot ScopeとSwingUの公開統計を参照しているスクランブリング率の基準値をそのまま使っています。18ホールあたりにグリーンを外す回数は、Shot Scopeが公開しているハンディキャップ別のパーオン率(HC20で約17%、HC15で約24%、HC10で約30%、スクラッチで約55%)から逆算した概算です。距離別の1パット率はPGAツアーの公開データで、アマチュアの数値はこれより低くなります。本文中の逆算と掛け算の例は、目安の数字から組み立てた概算であり、実測調査ではありません。
- SwingU「Up and Down Conversion by Handicap」 swingu.com
- Shot Scope「How many greens do amateur golfers hit?」 shotscope.com
- PGA Tour「Putting / Scrambling Statistics」 pgatour.com
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