- グリーン周りのバンカーはすり鉢状。入った時点で平らなライのほうが珍しい
- 左足下がりは低いランナー前提、左足上がりは大きめの振り幅、目玉はフェースを閉じて打ち込む
- アゴが腰より高く、ボールからアゴまで1歩以内なら、ピン方向は捨てて横か後ろへ
- どうにもならない目玉は2罰打のアンプレヤブルで外へ。粘るより安いことがある
砂の中の傾斜ライ
傾斜シリーズも3本目になりました。1本目で4つの傾斜の理屈を、2本目でアドレスの手順と練習方法を扱って、今回はいちばん嫌な場所の話です。バンカーの中の傾斜。
グリーン周りのバンカーは、たいていグリーンに向かって砂がすり鉢状に傾いています。つまり入った時点で、平らなライのほうが珍しい。フェースを開いて砂ごと運ぶという平らなライの基本は、傾斜が絡むとそのままでは通用しません。
この記事の半分は打ち方の話ですが、残り半分は諦め方の話です。週末ゴルファーのサンドセーブ率は1割を切るというデータがあります(詳しくはサンドセーブ率の記事で)。バンカーから寄せてパーを拾うのは、もともと10回に1回の世界。傾斜ライでピンを狙う理由は、ほぼありません。
左足下がりの打ち方
グリーンに向かって下る斜面。バンカーの奥側に入ったときのライで、砂の中では文句なしに最難関です。
理屈は芝の上の左足下がりと同じで、斜面がロフトを打ち消すので低い球しか出ません。ふわりと上げてピンのそばに落とす絵は、最初から捨ててください。
肩のラインを斜面と平行にする
左足体重で、肩を斜面に沿って傾けます。水平に構えると、クラブが斜面に刺さって終わりです。
ボールは右足寄り、フェースは開きすぎない
低い球しか出ない前提なので、フェースは軽く開く程度に。開きすぎるとバウンスが弾かれて、刃がボールに直接当たります。
斜面に沿って低く長いフォロー
打ち込んで終わりにせず、ヘッドを斜面なりに低く出し続けます。すくった瞬間にホームランです。
出る球は低いランナーです。アゴを越えられる方向にしか打てず、それがピンと逆ということもよくあります。それでいい。転がってグリーンのどこかに乗れば上出来です。
左足上がりの打ち方
グリーン側のアゴへ向かう上り斜面。手前側に入ったときのライで、左足下がりに比べればだいぶ気楽です。斜面がロフトを増やしてくれるので、球は勝手に上がります。
問題は距離のほうです。高く上がる分だけ前に進まず、砂の抵抗も増える。振り幅は普段の1.5倍のつもりでちょうどよく、中途半端に合わせにいくとアゴの途中で力尽きます。構えは斜面に沿って右足体重、あとはフィニッシュまで振り切るだけ。
高く出て着地後に止まりやすいので、4つの状況で唯一、寄せを考えていいライだと思っています。逆に言えば、ここ以外で寄せを考えるのは欲張りです。
目玉の打ち方
ボールが落下の勢いで砂にめり込み、周りに土手ができた状態。雨上がりや砂の柔らかいコースでよく出ます。
打ち方は通常のバンカーショットとほぼ逆です。フェースを開かず、閉じ気味にかぶせて、リーディングエッジをボールのすぐ手前へ鋭角に突き刺す。フォローは取れなくて構いません。砂ごと掘り出す、1回きりの動きです。
出た球はスピンが利かず、着地してからよく転がります。ピンの位置は忘れて、転がっても大丈夫な広い方向へ。グリーン奥までいっても、それは失敗ではありません。
ボールの赤道が砂面より下に沈んでいたら目玉として扱ってください。半分見えているから大丈夫、と通常の打ち方をするのがいちばん高くつきます。
アゴ近くの処置
前方のアゴのすぐ下で止まった状況。ここは打ち方の工夫でどうにかなる範囲が狭い場所です。ほとんど真上に打ち出す必要があり、プロがトーナメントで横に出す場面も中継で時々見ます。
私の基準ははっきりしていて、アゴが腰より高く、ボールからアゴまでが1歩以内なら、ピン方向は見ません。横か、最悪は後ろの平らな砂に出します。1打損した気分になりますが、平らなライからの次打はコントロールできるので、合計では悪くない。
なお2019年から、バンカー内でも小石や落ち葉を取り除けるようになっています。アゴ下の窮屈なライでは地味に効くルールなので、覚えておいて損はないです。
出すだけに切り替える基準
ここまでをまとめると、傾斜バンカーの4状況のうち寄せを狙っていいのは左足上がりだけです。残りは全部、1打で砂の外に出れば合格。
切り替えの合図は、素振りの段階で1打で出る絵が描けるかどうか。描けないまま構えに入るのは、練習したことのないショットをぶっつけで打つのと同じです。斜面に合わせてアドレスを作る手順は2本目の実践編と骨格が同じですが、ひとつ注意。バンカー内の素振りでクラブが砂に触れると2罰打です。確かめるなら砂の外か、宙で斜面と平行に振ってください。
2罰打でバンカーの外へ
それでも出る絵が描けない状況はあります。アゴ直下の目玉が代表格。ここで効くのが、2019年に導入されたバンカー内アンプレヤブルの選択肢です(規則19.3)。
罰1打の場合、元の位置に戻る打ち直しを除けば、ドロップはバンカーの中に限られます。合計2罰打を払えば、ピンとボールを結んだ後方線上でバンカーの外にドロップできます。打数の数え方や他の選択肢との比較は罰打の数え方の記事にまとめてあるので、そちらをどうぞ。
2罰打は高く感じます。ただ計算すると微妙にそうでもない。2打目でアゴ直下の目玉に入れた場合、粘って2回失敗し5打目でやっと出るのと、最初から2罰打を払って5打目を芝の上から打つのは、消化打数が同じです。しかも後者は次が普通のアプローチ。だから私は、同じ場所から2回打っても出るイメージが湧かないなら、1回目を打つ前にアンプレヤブルを選びます。2回失敗してから考えるのでは遅い。
まとめ
バンカーの傾斜ライは、上手い人ほど欲張らない場所です。左足上がりだけは寄せてよし。左足下がりと目玉は出すだけ。アゴ直下は横か後ろ、それも無理なら2罰打で外へ。この割り切りだけで、バンカーひとつで3打も4打も失う事故はぐっと減ります。
そして、自分がバンカーで実際に何打使っているかは、記憶より記録のほうが正直です。一度数字で確かめてみてください。
参考文献・データについて
本記事のルールに関する記述は、R&AとUSGAによる2023年改訂のゴルフ規則(規則12、15、19ほか)に基づいています。打ち方の解説は一般的なゴルフコーチングの知見によるもので、砂質や傾斜の度合いによって結果は変わります。
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