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ストロークスゲインド完全ガイド:本当の弱点を見つける

ストロークスゲインド(SG)の仕組み・計算方法・4カテゴリの詳細をアマチュア向けに徹底解説。データで自分のゴルフを丸裸にし、本当に練習すべき領域を見つけましょう。

ゴルスコ編集部
GOLSCO Editorial
2026年5月8日10分で読めます
#SG#完全ガイド
この記事のポイント
  • ストロークスゲインド(SG)は「基準スコアとの差分」で全ショットを評価する統計手法
  • SG: Approach(アプローチ)がアマチュアのスコア差を最も大きく左右する
  • パットが下手だと思い込んでいるゴルファーの多くは、実際にはロングゲームに最大の課題がある
  • 5ラウンド分のデータがあれば信頼性のある傾向分析が可能になる

「何を練習すればいいかわからない」を終わりにする

ゴルフの上達には練習が欠かせません。しかし、何を練習するかを間違えていたら、どれだけ打席に通っても遠回りです。

「パットが入らないからパット練習」「ドライバーが曲がるからドライバー練習」――こうした直感的な判断は、実は的外れであることが少なくありません。ストロークスゲインド(Strokes Gained)は、感覚ではなくデータで本当の弱点を炙り出すための統計手法です。

この記事では、SGの理論的な背景から、4つのカテゴリの詳細、アマチュアが実際に活用する方法まで網羅的に解説します。


ストロークスゲインドの基本原理

生みの親:マーク・ブロディ教授

ストロークスゲインドは、コロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブロディ教授が開発しました。2011年にMIT Sloan Sports Analytics Conferenceで発表され、PGAツアーでは2011年のパッティング統計から正式採用が始まりました(Mark Broadie, Interfaces, 2012)。

ブロディ教授の著書『Every Shot Counts』(2014)はゴルフ統計分析のバイブル的存在で、この本がSGの概念を一般ゴルファーにも広めるきっかけとなりました。

「平均からの差」という発想

SGの核心はあるショットが「平均的なプレーヤーと比べて何打得した(または失った)か」を計算することです。

ゴルフのあらゆる状況――距離、ライ、位置――について、平均的なプレーヤーがそこからホールアウトするまでに必要な打数の期待値(ベンチマーク)が存在します。SGはこの期待値を使って、各ショットの「価値」を算出します。

計算式

SG = 開始地点の期待打数 − (1 + 結果地点の期待打数)
ストロークスゲインドの基本計算式
値がプラスなら平均より得をした、マイナスなら損をしたことを意味する

たとえば、残り180ヤードのフェアウェイからのショットを考えます。

  • 開始地点の期待打数: 3.20打(180ヤード・フェアウェイから)
  • 結果: グリーンオン、残り5メートル
  • 結果地点の期待打数: 1.82打(5メートルのパット)
  • SG: 3.20 - (1 + 1.82) = +0.38

このショットは平均的なプレーヤーより0.38打分「得をした」という評価になります。


SGの4カテゴリを深掘りする

PGAツアーではSGを4つの領域に分割して測定しています。それぞれの領域がスコアに与えるインパクトはまったく異なります。

1. SG: Off the Tee(ティーショット)

ティーグラウンドからの第1打を評価します。対象はPar4とPar5のティーショットです(Par3は直接グリーンを狙うためApproachに分類されます)。

評価されるのは飛距離だけではありません。方向性と結果的なライも含めた総合評価です。280ヤードのフェアウェイと300ヤードの深いラフでは、前者のほうがSG的には高評価になることも十分あり得ます。

2. SG: Approach the Green(アプローチ)

100ヤード以上の距離からグリーンを狙うショットが対象です。Par3のティーショットもここに含まれます。

ブロディ教授の分析によると、ロングゲーム(ティーショット+アプローチ)がプレーヤー間のスコア差の約68%を占めます。なかでもアプローチショットの影響が最も大きく、プロとアマの差がもっとも顕著に表れる領域です。

3. SG: Around the Green(グリーン周り)

グリーン周り30ヤード以内(ただしグリーン上ではない)からのショットです。チッピング、ピッチショット、バンカーショットが該当します。

4. SG: Putting(パッティング)

グリーン上のすべてのパットを評価します。距離別にきめ細かく分析でき、1メートルのパットと10メートルのパットを同じ「1パット」として扱わない点が従来のパット数統計と決定的に異なります。

スコア差の内訳

ブロディ教授の研究(2014)では、PGAツアーにおけるプレーヤー間のスコア差の内訳が示されています。ロングゲーム(Off the Tee + Approach)が約68%、ショートゲーム(Around the Green)が約17%、パッティングが約15%。多くのアマチュアが思い込んでいるほどパッティングの比率は高くありません。


従来の統計指標との比較

SGが登場する前、ゴルフの統計といえばフェアウェイキープ率やパーオン率が中心でした。これらは直感的にわかりやすい反面、重大な限界があります。

従来の指標見えないものSGでわかること
フェアウェイキープ率ミスの深刻度(1ヤードのラフとOBが同じ扱い)ミスの質と結果への影響
パーオン率グリーンのどこに乗ったかピンとの距離を含めた精度
平均パット数パーオン時のパット距離の差距離別のパッティング能力
スクランブリング率寄せの距離やライの難易度状況別の寄せの実力
こうなりがち
FWキープ率70%で安心 → 外した30%のうち半分がOBだったかもしれない
おすすめ
SG: Off the Teeで+0.3 → ティーショット全体として平均より0.3打得している

アマチュアがSGを活用するための手順

PGAツアーのShotLinkシステムのように全ショットの位置を自動記録する仕組みがなくても、SG的な分析は十分可能です。

ホール別のスコアとパット数を記録する

最低限必要なデータはこの2つです。18ホールそれぞれのスコアとパット数を正確に記録しましょう。スコアカードの裏にメモするだけでも十分です。

フェアウェイキープとパーオンの有無を追加する

各ホールでフェアウェイに乗ったか、パーオンしたかを記録すると、分析の精度が一段上がります。○×で十分です。

5ラウンド以上のデータを蓄積する

1ラウンドの結果は偶然に左右されます。5ラウンド以上のデータが集まると、統計的に意味のある傾向が見えてきます。10ラウンド以上あればさらに信頼性が高まります。

カテゴリ別に基準値と比較する

自分のハンディキャップ帯の平均値と比較し、どのカテゴリで平均を下回っているかを特定します。

最も弱いカテゴリに集中して練習する

SGの値がもっとも低い領域に練習時間を集中させることで、最短でスコアが改善します。

ハンディキャップ別の基準値

Shot ScopeやSwingUの大規模データに基づくアマチュアの基準値です。

カテゴリHC20HC10スクラッチ
パーオン率(GIR)約20%約35%約56%
FWキープ率約43%約50%約57%
平均パット数/R373331
スクランブリング率20%32%50%
ペナルティ/R3打1打0.3打

よくある「思い込み」をSGが覆すケース

ケース1:パットが悪いと思っていたが......

「3パットが多いからパット練習を増やそう」と考える人は多いですが、SG分析をすると「アプローチでグリーンの遠い場所に乗せているからパットが長くなっている」というケースが頻出します。

この場合、改善すべきはパッティングではなくアプローチの精度です。

ケース2:ドライバーが苦手だと思っていたが......

ドライバーでOBが出るとインパクトが強烈なので記憶に残ります。しかし、SG: Off the Teeで分析すると実はそれほど悪くなく、むしろセカンドショット以降のSG: Approachが大きくマイナスだった、というパターンもあります。

ケース3:ショートゲームに自信があったが......

グリーン周りの「ナイスアプローチ」が印象に残りやすい一方で、普段の寄せが平均的にどれくらいの精度かをSGで分析すると、実は基準値を下回っていたという結果になることもあります。

記憶バイアスに注意

人間は劇的なミス(OBや4パット)やナイスショットばかり記憶します。SGが強力なのは、こうした記憶バイアスを排除し、「すべてのショットの平均的な質」を数値化できる点です。


SG分析の実践的な活用法

練習配分への反映

SGの結果を練習時間の配分に直接反映させましょう。

SG結果推奨する練習配分
Approachが最もマイナス練習時間の50%をアイアン・ウッドの方向性に
Off the Teeがマイナスティーショットの安定性(3Wやユーティリティの活用も検討)
Around the Greenがマイナス30〜50ヤードのアプローチとバンカー練習
Puttingがマイナス距離別パッティングドリル(特に3〜5メートル圏)

コースマネジメントへの応用

SGデータは「攻めるべきか守るべきか」の判断にも使えます。たとえばSG: Off the Teeがプラスなら積極的にドライバーを振り、SG: Approachがマイナスなら無理にグリーンを狙わずレイアップを選ぶ、といった戦略判断が合理的です。

定期的なレビュー

10ラウンドごとにSGバランスを確認し、練習の方向性を再評価することをおすすめします。弱点は固定的ではなく、練習によって変化していくからです。


まとめ

  1. SGは「すべてのショットを平均との差で評価する」統計手法
  2. ロングゲーム(Off the Tee + Approach)がスコア差の約68%を占める
  3. 従来の指標では見えない「ミスの質」がSGで可視化される
  4. アマチュアでもホール別スコア+パット数の記録からSG的分析が可能
  5. SGの弱点カテゴリに集中練習することが最短の上達ルート

感覚に頼った練習から卒業し、データが示す弱点に集中投資する。それがSGの本質であり、最も効率的な上達法です。


参考文献・データについて

本記事のSG理論はMark Broadie教授の研究に基づいています。基準値データはShot Scope・SwingUの公開統計を参照しています。

  1. Mark Broadie「Assessing Golfer Performance on the PGA TOUR」(MIT Sloan Sports Analytics Conference, 2011)
  2. Mark Broadie『Every Shot Counts』(2014, Avery)
  3. Mark Broadie「Assessing Golfer Performance Using Golfing Analytics」(Interfaces, 2012)
  4. PGA Tour「公式統計」 pgatour.com
  5. Shot Scope「Performance Stats by Handicap」 shotscope.com
  6. SwingU「Handicap Breakdown Statistics」 swingu.com

ゴルスコ編集部

ゴルフスコア分析アプリ「ゴルスコ」の編集部です。データとスタッツに基づいたゴルフ上達のヒントをお届けします。

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