- マーカーは同伴プレーヤーのスコアを記録して証明する係。競技のスコアカードには自分ではなく相手のスコアを書く
- 流れは、各ホール終了時に口頭で確認、ラウンド後に読み合わせてマーカーと本人がサイン(アテスト)、委員会へ提出
- 実際より少ないスコアを提出すると原則失格。多く書いた場合は罰なしで、その多いスコアがそのまま有効(規則3.3b)
- ハンディキャップの記入と計算は2023年改訂で委員会の責任に。プレーヤーが責任を持つのはホールごとのグロスだけ
初めての月例で渡される、他人のスコアカード
競技デビューの朝、受け取ったスコアカードをスタート前に同伴者と交換します。手元に残るのは、同じ組の誰かの名前のカードです。
書くのは、その人のスコア。自分のスコアは、別の誰かが書いてくれています。
これがマーカー制度です。ゴルフには審判が付いて回りません。ラフでのソールも短いパットの処理も、見ているのはせいぜい同伴者だけ。だからスコアの証明を同伴者同士で担い合う形になっています。マーカーは委員会が指定するか、委員会が認めた方法でプレーヤーが選びます。月例なら組み合わせ表の並び順で機械的に決まっていることが多いようです。
マーカーの役割
マーカーの仕事は2つです。担当するプレーヤーのホールスコア(グロス)を記入すること。そしてラウンド後、その記録が正しいと証明することです(規則3.3)。規則では、ホールが終わったらできるだけ早くプレーヤーと打数を確認して記入すべき、とされています。
書くのはグロスだけで足ります。パット数やフェアウェイキープの欄が印刷されたカードもありますが、あれは埋めなくても競技上は問題ありません。
一方で、マーカーに審判の権限はありません。たとえばアンプレヤブルの宣言に、マーカーの同意は不要です。逆に、記入されたスコアに納得できなければ、マーカーはそのホールの証明を拒めます。その場合は委員会が事実を調べて裁定する。プレーヤーとマーカーのどちらかが偉いわけではなく、割れたら第三者に渡す仕組みです。
ティーオフから提出までの流れ
スタート前にカードを確認する
自分が誰のマーカーなのか、誰が自分のマーカーなのかを確認します。自分のスコアを自分のカードの端にメモしておくのは自由で、むしろ照合のために書いておくのが普通です。
各ホールの終了直後に口頭で合わせる
グリーンを出たら「5です」「はい、5」。これだけです。私は次のティーに着く前に声に出して合わせる派です。歩いている間に1打の記憶は平気で飛びます。
ラウンド後にスコアリングエリアで読み合わせる
18ホール分を1ホールずつ突き合わせます。面倒に見えて、慣れた組なら2分で終わります。ここが最後の修正チャンスです。
サインして提出する
マーカーが証明のサインをし、本人が内容を確認してサインする。これがいわゆるアテストです(規則書上の用語は証明で、アテストは通称)。多くの競技では、スコアリングエリアを出た時点で提出扱いになり、以後は直せません。
ハンディキャップ欄と2023年改訂
以前はここに落とし穴がありました。2019年規則では、ハンディキャップ競技でカードに自分のハンディキャップを正しく示す責任はプレーヤーにあり、実際より高いハンディキャップを書いて提出し、それがネットスコアの計算に影響すると失格。書き忘れでも失格でした。スコアは完璧なのにハンディキャップ欄で競技が終わる、というやや理不尽な失格が実際に起きていたわけです。
2023年改訂でこの責任は委員会に移りました。ハンディキャップの記入もネットスコアの計算も委員会の仕事になり、プレーヤーは書かなくてよくなっています。あわせて、紙だけでなく電子形式のスコアカードも正式に認められました。
つまり現行ルールでプレーヤーが背負うのは、ホールごとのグロスの正しさだけ。合計欄を足し間違えても罰はありません。責任の範囲が狭く明確になったので、悪くない改訂だと思います。
書き間違いの直し方
提出前なら簡単です。間違えた数字を二重線で消して、読めるように書き直すだけ。訂正印もマーカーの再サインも、規則上は要求されていません。直したらマーカーにひと声かけて、認識を合わせておけば十分です。
プレーヤーとマーカーで打数の記憶が食い違い、話しても解決しないときは、その場で委員会に持ち込みます。どちらかの数字で黙って提出するのはやめてください。少ない方の数字が間違っていたら、次の節の失格ルールに直行します。
提出後は原則として変更できません。だからこそ、提出前の読み合わせに2分かける価値があります。
規則3.3bの非対称な罰
スコアの誤りへの罰は、方向によってまったく違います。
実際より少ないホールスコアで提出したら、原則失格。1打でもです。例外は1つだけで、自分が知らなかった罰打が原因の場合は、失格ではなくその罰打を加えたスコアに訂正されます。
実際より多く書いた場合は、罰はありません。ただし訂正もされず、その多いスコアがそのまま採用されます。損をするのは自分だけ、という扱いです。
審判のいないゲームで、過少申告だけは信用の根幹に関わる。だから重く、過大申告は本人が損するだけだから放置。この割り切りが規則3.3bです。そして実際の失格例としてよく聞くのは、故意の過少申告よりも罰打の数え間違いです。OBの打ち直しを1打少なく数えていた、というパターンが典型で、罰打の数え方は罰打の数え方ガイドで整理しています。競技に出るなら先にこちらを固めておくほうが安全です。
証明のないスコアカードを提出すると、内容が正しくても失格です(規則3.3b)。提出箱に入れる前に、サイン2つと18ホール分の数字を指差しで確認してください。
プライベートラウンドでの実務
仲間内のラウンドまで競技の作法でやる必要はありません。ただ、持ち込む価値のある習慣が2つあります。
1つはホールアウト直後の口頭確認。記憶が新しいうちに合わせるから正確なのであって、ハーフ終わりにまとめて思い出すと、だいたいどこかで1打ズレます。もう1つはホール別のグロスを残すこと。合計だけのメモは後から何の分析もできませんし、コンペならホール別スコアがそのまま順位決定に使われます。同スコアで並んだときの決め方はカウントバックの解説に書いたとおり、後半9ホールから遡って比較するので、ホール別が残っていないと勝負にすらなりません。
記録の持ち方は、ラウンド中は紙かカートのナビで確定させて、帰宅後にアプリへ転記する運用が現実的です。プレー中にスマホへ入力するのは同伴者の目もあって微妙、という人は多いはず。18ホールの転記は5分もかかりません。
まとめ
マーカーは同伴者のスコアを記録して証明する係。各ホールで口頭確認、ラウンド後に読み合わせてサイン2つ、それから提出。プレーヤーの責任はホールごとのグロスだけで、ハンディキャップと合計は委員会が面倒を見てくれます。怖いのは過少申告の失格だけ。その多くは罰打の数え間違いから来るので、数え方とセットで覚えておけば、競技のスコアカードは何も怖くありません。
参考文献・データについて
本記事のルール解説は、R&AとUSGAによる2023年改訂のゴルフ規則(規則3.3ほか)と、JGA日本ゴルフ協会による2023年規則改訂の解説に基づいています。スコアリングエリアの範囲や電子スコアカードの採否など、細部の運用は主催する委員会が定めるため、参加する競技の条件を確認してください。
関連記事
ゴルフの罰打(ペナルティ)の数え方:OBの後は何打目?ケース別に解説
OBは1罰打で打ち直し?前進4打なら何打目?ペナルティーエリアやアンプレヤブルの選択肢まで、罰打の数え方をケース別に整理。スコアカードへの記入例つきで、2023年改訂の現行ルールに準拠しています。
グリーン上のルール:マーク・リペア・旗竿の扱い
ゴルフのグリーン上で知っておくべきルールを解説。ボールのマーク方法、ボールマークの修復、旗竿の扱い、パッティングラインの保護など、初心者が迷いやすいポイントを整理します。
無罰でドロップできる状況まとめ:カート道・修理地・etc
ゴルフで無罰(ノーペナルティ)の救済を受けられる状況を網羅的に解説。カート道、修理地、排水溝、動かせない障害物など、知っているだけで得するルールを紹介します。
OBのルール完全解説:ローカルルールの前進4打含む
ゴルフのOB(アウトオブバウンズ)のルールを完全解説。正式ルールでの処置、日本特有の前進4打(プレイング4)、2019年改定のローカルルール選択肢を紹介します。
ペナルティエリアのルール:赤杭と黄杭の違い
ゴルフのペナルティエリア(旧ウォーターハザード)のルールを解説。赤杭と黄杭の違い、救済の選択肢、2019年改定で変わったポイントを初心者向けに紹介します。
暫定球のルールと正しい手順:OBかもしれない時の対処
ゴルフの暫定球(プロビジョナルボール)のルールと正しい宣言手順を解説。OBやロストボールの可能性がある時に、プレーペースを保つための重要なルールです。